息子が生まれた次の年の初節句、喜んだ母が五月人形を買ってくれた。
どうせ買うならいいものを、という気持ちだったと思う。
デパートの人形売り場に行くと、それこそピンからキリまでいろんなタイプのが初狭しと並んでいた。
迷って迷って選んだ。
最終決定は、スポンサーである母だった。
それは、私たちも気に入った一品で、凛々しい若武者の姿が何とも言えずいい。
落ち着いた色でこれがいい、ということになったのだった。
何より顔つきがいい。
それは最高級ではなかったかもしれないが、陳列してある中ではかなりのランクであったはずだ。
床の間に飾ったらたいそう映える筈だ、とみんなが想像していたのだった。
その時、店員が、「これ飾る場所、あるんですか?」と言った。
いやはやびっくり。
そのデパートで買うのを止めようと思った位である。
失礼もはなはだしい。
結局、買って帰ったのだが、今でもあの時の店員の言葉を思い出している。
我が家の人形、そんなエピソードを知る由も無く、あれから20年以上、4月末になると床の間に鎮座している。